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ふたりで紡ぐ、静かな午後の3つの物語。盛岡・雫石のコーヒースタンドへ

テイクアウト

朝から夜まで予定を詰めこむのもいいけれど、“あえて何もしない”時間を過ごすことが、大人のふたりには必要だったりする。
盛岡の町には、そういう静かな時間にそっと寄り添ってくれるコーヒースタンドがある。

丁寧に淹れられた一杯と、言葉のないひととき。
会話がなくても、沈黙が気まずくない時間。
ふたりだけの温度で、ゆっくりと流れる休日。

そんな1日を、3つの物語で綴ってみました。

☕STORY1朝の静けさを分け合う—盛岡「WAYS」

休日の朝、ふたりで向かう道すがら、まだ少し眠たそうな顔を並べて歩く。
盛岡・中ノ橋の小さな交差点の角にある、黒を基調とした小さなコーヒースタンド「WAYS」は、そんな朝の空気にすっと馴染むように佇んでいる。

一歩足を踏み入れると、思わず声をひそめたくなるような、澄んだ香りの気配。
ハンドドリップの所作を見つめながら、ふたりの言葉はだんだんと静かになっていく。
いつもより少し長く淹れられる時間が静かな区切りになる。

「浅煎りが好きかも」「私は深煎りのほうが落ち着くかな」
そんな、些細な好みの違いさえも、やわらかく浮かび上がる朝。
真っ白なカップの熱が指先から伝わってきて、自然と歩幅も合っていく。

大人になると、予定のない休日がいちばん贅沢になる。
だからこそ、“わざわざ寄りたい”と思える一杯があることは、ふたりの時間の価値を少しだけ底上げしてくれる。

店を出たあと、紙カップを片手にふたりで川沿いを歩きながら、ぽつりとこぼれた言葉。

「こういうの、続けたくなるよね」

その一言に、コーヒーよりもあたたかいものが、静かに満ちていく。

☕STORY 2昼、少し遠回りしてでも行きたくなる—雫石「オーロラコーヒー」

少し遠くまでコーヒーを飲みに行こう、と言ったのは私だった。
ふたりとも忙しい日が続いていたから、どこかで一度、
ちょっと立ち止まりたかったのかもしれない。

盛岡から車でおよそ30分。
緑の景色、静かなBGM、少し遅めの朝。
言葉は少なかったけれど、それも悪くなかった。

「オーロラコーヒー」に着くと、ふたりとも自然と声のトーンが落ち着く。
香ばしい香りと、整えられた空間。
注文を終えて並んで立っているだけなのに、どこか、居心地がいい。

車に戻って、片手にテイクアウトのカップを持ちながら走り出す。
深みのある味わいが、ゆっくり身体に沁みていく。

信号待ちのとき、ちらりと横を見ると、
彼はまだコーヒーを飲んでいた。
言葉にしなくても、そんな瞬間に、ふとあたたかいものが流れた。

ただこうして、立ち止まる時間が、ふたりには必要だったのかもしれない。

☕STORY 3午後、光と香りに包まれて—盛岡「CAFE L’aube」

休日の午後。まっすぐ家に帰るには、ちょっと惜しい気分のときがある。

中央公園のまなび棟、緑に囲まれたビバテラスにある「CAFE L’aube」。
芝生が広がるテラス席に腰かけると、遠くから子どもたちの笑い声が聞こえてくる。
冷たいカップに水滴がにじみ、風が頬をやさしくかすめていく。

ふたりの会話は、途切れたり、何気なく続いたり。
言葉がなくても、不思議と居心地の悪さはない。

「帰ったら、何食べようか」
ぽつりとこぼれるその一言が、心をゆっくり解いてくれる。

日常のなかに、こんな穏やかな時間がふいに差し込むだけで、
その日が少し好きになったりする。

会話でも沈黙でもない、ふたりだけの静かなやわらかさ。
この場所の空気と一緒に、そっと思い出に残っていく。


特別な景色じゃなくても、誰かと並んで同じ時間を過ごすことがふと記憶に残ったりする。

コーヒーの香り、グラスの重み、
すれ違う風や、ふたりのあいまいな会話まで—
その全部が、あとからじんわりと沁みてくる。

盛岡には、ちゃんと“立ち止まれる場所”がある。
ふたりで静かに呼吸を揃えるような、そんな時間が。

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